ケセラセラ通信日記 -5ページ目

「大阪アジアン映画祭」5日目

12日(火)。映画を観ながら眠ってしまうという失態が続いたので、今日から自分の観賞予定作品を間引いてQ&A司会の準備に充てることにした。

 

8時に起き(睡眠5時間)、午後1時までQ&Aの準備。シネ・リーブル梅田へ移動して『ハイ・フォン』(監督:レ・ヴァン・キエ)を観賞。文句なしに面白い娯楽アクション作品。主演女優ゴ・タイン・バンの魅力が輝いている。つよい目力、しなやかな肢体、そして抜群の運動能力。武術家の父から厳しく指導された、ありえないほど強い女を演じているが、彼女がそれほど強いのは、愛する娘を救出したい一念ゆえだった、というところが泣かせる。ハイ・フォンは、主人公の名前。

 

『ホームステイ』が満席だったので、『左様なら』(監督:石橋夕帆[ゆうほ])を観る。10日に続き2回目。友情、恋、いじめ、無関心、孤立、思いやり、希望などが横溢する高校生群像を、実にリアルに見せてくれる。主演の芋生悠(いもう はるか)と祷キララ(いのり きらら)の瑞々しさ! 肌の質感まで伝わってくるようだった。

 

続いて『恋するふたり』(監督:稲葉雄介)。映画の公式サイトには《超自己チュー男と超引っ込み思案な女の恋するふたりのロードムービー》とある。「恋するふたり」ではあるが、ふたりは恋人同士ではなく、互いに恋人と婚約者があり、その恋人と婚約者が浮気をしているらしく、「ふたり」に会いに行くために「ふたり」が車で旅をするというロードムービーなのだ。主演は染谷俊之(そめや としゆき)と芋生悠。
Q&Aの司会を私が担当。ゲストは稲葉雄介監督と芋生悠さん。稲葉監督は俳優でもあって、『息を殺して』(監督:五十嵐耕平)や前述の『左様なら』にも出演しておられる。
芋生さんは、初舞台『欲浅物語』のドキュメント写真集『はじめての舞台』(撮影:岩澤高雄)の裏表紙に自筆で「夢 映画の中で死ぬ。」と書いておられ、そのことをお尋ねすると、「映画のお仕事が大好きで、その現場でなら死んでもいいと思って」と嬉しいお答えが返ってきた。
今日も客席から質問が3つ出たし、だんだん良くなってきたかなと思いつつ引っ込んだら、ジャケットの後ろ襟が立ったままだった。何かやらかすねえ。

「大阪アジアン映画祭」4日目

11日(月)、朝から夕方までシネ・ヌーヴォで仕事して、久しぶりにゆっくり食事を取り、シネ・リーブル梅田へ移動。
今日は、『ワイルドツアー』のQ&A司会をした。ゲストは三宅唱(みやけ しょう)監督。昨年、『きみの鳥はうたえる』で注目を集めた「時の人」だ。
映画は、山口情報芸術センターが主催するワークショップに参加した中・高生や、その進行役を務めた大学生を描いている。同ワークショップは、山口市内の植物や微生物を採取し、そのDNAを調べて「山口のDNA図鑑」を作り、山口の環境を理解しようとするもの。なぜDNAを調べるのかと思っていたが、普通の図鑑を見ただけでは区別のつかない植物があっても、DNAを調べれば一発で分かるから、という三宅監督のお答えで疑問は解消した。


映画のポスターにもなっている3人(中学3年生男子ふたりと、19歳の女子大学生)が主役。これはドキュメンタリーなのか、と思うほど演技が自然でリアル。しかも、3人とも演技経験はないのだという。まるで奇蹟のような映画だ。

 

反省ばかりの私のQ&A司会だが、今日は割とうまくいったと思う。

 

『ワイルドツアー』は、14日(木)16:00〜、シネ・リーブル梅田3で再上映される。また、3月30日から渋谷・ユーロスペースほかで全国順次ロードショー。関西では、5月4日からシネ・ヌーヴォと京都・出町座で、神戸・元町映画館は初夏の公開予定となっている。

 

Q&Aの司会が終わると、今日も気がゆるみ、次に観た『先に愛した人』では、またしても寝てしまった。自分の観賞予定を見直さなければなるまい。

「大阪アジアン映画祭」3日目

10日(日)、シネ・リーブル梅田で短編3本を含む7本を観たが、夕食を搔き込んでから観た1本は、不覚にも一部寝てしまった。書きたいことはいろいろあるが、明日は自分の仕事とQ&Aの司会があり、30分でも多く睡眠時間を確保したいので、今日はこれで。
注目作については、近いうちに書きたいと思う。

「大阪アジアン映画祭」2日目

9日、12時からシネ・リーブル梅田で『みじめな人』(原題:淪落人/監督:オリヴァー・チャン)を観る。リーフレットや公式カタログを読み、「こんな映画だろうな」という予想を持ってはいたが、見事に泣かされた。配役の妙(アンソニー・ウォン、クリセル・コンサンジ)、ツボを押さえた演出などに「やられた!」という感じ。

 

16時から同館で『シスターフッド』(監督:西原孝至)。フェミニズムやジェンダーについての詩的一考察、という趣のモノクロ作品。しかし、そのフェミニズムは攻撃的ではなく、優しい。「セルフ・リスペクト」という言葉が印象に残った。

 

上映後は、西原孝至監督と主演の兎丸愛美(うさまる まなみ)さんをお迎えしてのQ&A。私が司会を担当。昨日の反省から、今日は早めに客席からの質問を受けるようにした。質問は3つ出て、タイトルの意味は? モノクロにした意図は? など、まさに私もお訊きしたかったことで、客席との共鳴を感じた。
だが、最後の最後にドジをやらかした。「このあと、サイン会があります。サインをしていただけるのは、この公式カタログをお買い求めの方に限らせていただきます」と言いつつ、公式カタログを見せようとしたら、それを床にベタッと落としてしまった。なんとも、みっともない。
そもそも、監督や女優さんのサインをもらおうというほどの人は、公式カタログの存在を知らないはずはなく、見せる必要すらなかったのだ。アホやねえ。

 

昨夜は、このQ&Aの準備のために、3時間ほどしか眠れなかった。Q&Aが終わるまでは気が張っていたが、その後は一気にゆるみ、短編プログラムB(『2923』『小死亡』『WHOLE』)も『ヌンチャクソウル』も、観ながら寝てしまった。しかも、最前列で。いびきもかいていたようだ。私の周りの席にいた方々、すみませんでした!

「大阪アジアン映画祭」始まる

今日(8日)から「第14回 大阪アジアン映画祭」(以下、OAFF)が始まった。

午後4時から、シネ・リーブル梅田で『ピア〜まちをつなぐもの〜』の世界初上映。在宅医療・介護などの理想型を分かりやすく描いた日本の劇映画。破綻もなく、見事にまとまっている。ピア(peer)は、仲間という意味。同作品は、11日(月)午後9時からもシネ・リーブル梅田で上映される。上映時間は99分。

 

上映後は、監督の綾部真弥さんをお招きして、観客とのQ&Aタイム。この司会・進行役が、今回の私の初仕事となった。

持ち時間は20分だが、最初は「場をあたためる」ために、私からいくつか監督に質問。だが、事前準備のしすぎか、本編への感想を述べたり出演者についてお訊きしているうちに、気がついたら15分が経過していた。あわてて客席に「何かご質問は?」と投げてみたが、手は挙がらず。引き続き私が質問を続けるハメになり、終了間際に、ようやく客席から質問が出た。結局、お客様からの質問を受けられたのは、このひとつだけ。「私がしゃべりすぎたな」と反省。難しいものである。

 

とりあえずは本日のお役目を終えたので、オープニング・セレモニーが行なわれる「阪急うめだホール」へ徒歩で移動。しかし、シネ・リーブル梅田の近くでサーカス公演が開かれているらしく、長い旧地下道あたりの道が人々々で大渋滞。おかげで、OAFFの実行委員会委員長・上倉庸敬(かみくら つねゆき)先生の「開会のご挨拶」を聞き逃してしまった。

セレモニーのあとは、オープニング作品『嵐電』(監督:鈴木卓爾)の世界初上映。予備知識なく観たが、3組の男女の恋愛を描きつつ、京都の磁場(?)が生み出すファンタジーも組み込まれ、まるで夢を見ているような映画体験だった。

 

さて、これから明日(もう「今日」だけど)のQ&A司会の準備だ。映画祭は楽しいけれど、期間中は苛酷な日々でもある。

『金子文子と朴烈(パクヨル)』をめぐって

森ノ宮で、映画パブリシスト・岸野令子さんが主催する「シネマトーク」に参加。今日のお題は『金子文子と朴烈(パクヨル)』(監督:イ・ジュンイク)で、参加条件は同作をすでに観ていること。
私は昨年、大阪アジアン映画祭のオープニングで観たが(その時のタイトルは『朴烈[パクヨル] 植民地からのアナキスト』)、今日のためにシネマート心斎橋で5日(火)にもう一度観てきた。
まずは参加者10人が、自己紹介を兼ねて同作の感想を順に述べていく。「朴烈を演じたイ・ジェフンのファンなんです」と言う人もいれば、「カラッとした今風の映画、と感じた。金子文子を演じたチェ・ヒソが素晴らしかった」「金子文子と朴烈が、実際にどんな思想を持ち、どんな活動をしていたのかが分からない(描かれていない)。ちょっと戯画化しすぎでは、とも思った」「自分はサラッとした映画とは感じなかった」「映画を観て、このふたりについてもっと知りたくなり、いろんな本を読んでいるところ」「アジアン映画祭のオープニングでこれを上映して、本当に大丈夫なの?と思った」などなど、実に多彩な意見が出てきて、驚いた。
私は、「最初に観たときは、爽やかな青春映画、恋愛映画だと感じた。しかし2度目に観たときは、基本的な印象はそれほど変わらないものの、ふたりに公平な裁判を受けさせようと尽力した日本人がいたことや、けっこう過激な発言もきっちり拾ってあることに気づき、公正に描こうとしたんだなと思った」などと述べた。
興味深かったのは、本作がこれほど人気になっているのは、観た人が口コミで広げたり、「勝手連」的な動きをする人々がいるためで、その基底には、ヘイトな言動や風潮が蔓延している現状を打破したいと感じている人々が、静かなカウンター行動として映画館に足を運んでいる、そんなうねりがあるのではないか、という岸野さんの指摘だった。
とてもすべては書ききれないが、参加者全員が自由に遠慮なく発言している感じが非常に良く、また来たいなと思った。

 

映画『ぼくの好きな先生』

前田哲(てつ)監督によるドキュメンタリー『ぼくの好きな先生』(2018年)を試写で観てきた。

映画のタイトルを聞き、まず忌野清志郎の同名の歌を思い出したが、それが主題歌に使われている。歌と同様、映画も「絵の先生」が主人公だが、歌のイメージよりは明るく、おしゃべりだ。

もらった資料に載っていた「監督のことば」には、《私は、縁あって2009年より2017年3月まで、山形県にある東北芸術工科大学で、「映画の先生」として学生たちに指導しておりました。そこで、「洋画の先生」である瀬島匠(せじま たくみ)さんと出会い、交流していると、とてつもない「生きる力」を感じられたのが、全ての始まりです。》とある。

映画の中にも「命が動くほうへ」というような言葉があったと思うが、それを言った画家・瀬島匠の人間的魅力にあふれたドキュメンタリーだった。前田監督の初ドキュメンタリー作品でもある。

瀬島さんは現在56歳、前田監督は46歳だ。映画は、前田監督が瀬島さん(撮影時は54歳)に話しかけるかたちで進行するが、その前田監督の声のトーンが、どこか茶化しているような、ふざけているような印象を与える。しかし、親しい関係ではあっても、決してバカにしているわけではなく、本人はいたって真面目なのだと思う。それは、私自身が自分の声を録音で聞いたとき、同じような印象を受け「イヤな話し方だなあ」と思っているからだ。

いささか個人的な感想になってしまった。本題に戻そう。瀬島さんの描く絵が、ダイナミックで良い。海と空がある、ほぼ同じ題材を「RUNNER」というタイトルで30年間も描き続けているのだという。ブリキのキャンバスを自分で作り、そこに油絵を描いていく。空き時間には趣味のラジコン飛行機を飛ばす。仕事も遊びも、実に楽しそうだ。

精力的な人でもあり、小型車やジープを駆って、大学のある山形、アトリエのある埼玉・長野、生まれ故郷の広島県因島へと、食事もろくに取らずに走り回る。疲れた様子は見せず、いつも陽気で話が止まらない。

だが、映画が終盤に差しかかったとき、30年も同じ題材を描き続けてきた「秘密」が明かされる……。

生きるとは、創作することとは、表現とは、などの問いかけが真摯になされた映画だと思う。

『ぼくの好きな先生』(85分)は、シネ・ヌーヴォ(Tel 06-6582-1416)で3月30日から。

 

シネ・ヌーヴォのオンライン化、成る

シネ・ヌーヴォの受付がオンライン化され、ネット予約もできるようになった。

今日(4日)は、オンライン化されてから私が初めて受付に立つ日で、朝から戦々恐々。たどたどしく端末を操作していたが、なんとか無事に終わった。しかし、発券ミスを3回やらかしてしまった。

 

夕方からは、奈良のY先生のお招きで、K夫妻とともに美味しいイタリア料理の店でご馳走になった。会食後には、美しく整えられ、素敵な絵画や小物がいっぱいのY先生のお部屋にお邪魔した。最後は、Y先生の旦那さんの運転で駅まで送っていただいた。Y先生ご夫妻、ありがとうございました!

「大阪アジアン映画祭」に向けて

今日(2日)は終日、8日から始まる「第14回 大阪アジアン映画祭」の準備。私も8回ほど登壇し、Q&A(映画制作者と観客との質疑応答)の司会を担当することになっているからだ。
まずは、映画祭のリーフレットや Facebook に載っているさまざまな作品情報を読み込む。で、そこから推測したオススメ作品を列挙しておく。しかし、私もまだ観ていないので、ハズレがあってもご容赦願いたい。

 

『パパとムスメの7日間』(クロージング作品)、『アサンディミッタ』『ブルブルは歌える』『過ぎた春』『オレンジ・ドレスを着た女』『視床下部すべてで、好き』『ハイ・フォン』『浜辺のゲーム』『なまず』『美麗』『アワ・ボディ』『非分熟女』『みじめな人』『ハッピーパッポー』『女は女である』『アルナとその好物』『ビリーとエマ』『群山:鵞鳥を咏う』『桃源』『Father(仮)』『シスターフッド』『ワイルドツアー』『いつか、どこかで』『雨季は二度と来ない』(短編プログラムA)、『WHOLE』+『小死亡』(短編プログラムB)、『じゃあまたね』+『ゆっくり』(短編プログラムC)

 

次に、私がQ&Aを担当することになっている作品をご紹介しておく。
3/8、16:00〜、シネ・リーブル梅田『ピア〜まちをつなぐもの〜』
3/9、16:00〜、シネ・リーブル梅田『シスターフッド』
3/11、18:30、シネ・リーブル梅田『ワイルドツアー』
3/12、18:40〜、シネ・リーブル梅田『恋するふたり』
3/13、18:20〜、シネ・リーブル梅田『風たちの午後 デジタル・リマスター版』
3/14、12:00〜、シネ・リーブル梅田『浜辺のゲーム』
3/14、 21:10〜、シネ・リーブル梅田『いつか、どこかで』
3/17、10:30〜、ABCホール『浜辺のゲーム』

 

これらの作品につき、また新たな情報や感想が出てきたら、改めてお知らせします。

最後の「次世代映画ショーケース」

今日(3月1日)は、京都・出町座で「次世代映画ショーケース」の最後の2本『天竜区奥領家大沢 別所製茶工場』(2014年/以下『天竜区』)と『夏の娘たち 〜ひめごと〜』(2017年/以下『夏の娘たち』)を観てきた。監督はともに2017年7月に47歳の若さで急逝した堀禎一で、『夏の娘たち』が遺作となった。

 

『天竜区』のほうだが、奥領家は「おくりょうけ」と読むようだ。浜松市の最北部、標高740mに位置する大沢集落での製茶の様子を丁寧に描いたドキュメンタリー。ナレーション、字幕、音楽、インタビューは一切なく、これも「ダイレクトシネマ」の一本と言えるだろう。

斜面集落の言葉どおり、家屋は急斜面にへばりつくように建ち、茶畑も段々になっている。女たち(主に高齢者)が茶を摘み、小さな製茶工場に運び込む。重さが測られ、乾燥され、粉砕され、すりつぶされ、煎られ、大きな茶箱に収められる。前述したように説明は一切ないので、その工程の記述に誤りがあるかもしれないが、ともかく淡々とカメラに捉えられ、それがすこぶる面白い。

製茶工場の前には、いつも一匹の犬(柴犬か)がいて、あくびばかりしている。おばさんたちが三々五々、工場に立ち寄るが、知らん顔。そのたたずまいがいい。一度だけ吠えたが、映画スタッフに対してではないように思えた。何に吠えたのだろう?

家内制手工業という言葉があるが、工場の中はそんな感じ。老人男性、中年男性、その妻(?)がいて、この3人が工場を切り盛りしているようだ。おそらく家族であろう。老人は、仕事の合間にときどき椅子に座って煙草で一服する。中年男性は、茶の煎り具合をチェックする役割のようだ。機械がいくつも並んでいるが、それほど複雑な構造でもないようだ。実際に、スパナやハンマー、ペンチなどが棚に並んでいるカットがあるが、そういう道具で故障を直せる機械なのだろう。

山には陽があたり、ときには雨になり、深い霧が湧く。茶の新芽は朝露を吸い、天を突くように伸びる。それがまた摘まれ、日が暮れ、朝が来る……。この地は「天空の里」と呼ばれているそうだが、ある種の理想郷であり、こういうのが本当の「生活」なんだろうなあと思えてくる。

この『天竜区』はシリーズになっていて、5作品あるそうだ。そのすべてを観たいと思った。

 

『夏の娘たち』は、おかしな映画だ。主演は『へばの』『おだやかな日常』『月夜釜合戦』などの西山真来(まき)。R15+指定になっているし、濡れ場も何度か出てくるのだが、まったくエロスを感じさせない。むしろ、義理の姉弟間でのまぐわいや、「えっ? この男と関係しちゃうの」と驚くまぐわいなど、山深い田舎町での複雑・濃密な人間関係を描くことに主眼があるように思われる。道祖神にまつわるセリフも出てきて、やはりセックスと書くよりは「まぐわい」がふさわしい。

周りの大人たちも、娘が不倫をしていても、とがめるでなし、失恋して自殺した男がいても「そんなこともあったなあ」みたいな感じで会話をする。なんともおおらかである。

映画づくりもおおらかというか、アバウトというか、細かいことには頓着しない、といったふうだ。カメラアングルに工夫を凝らした様子はなく、環境ノイズもカットされていず、セリフが聞き取れなかったりする。しかしそれは、今ある映画への挑戦として、あえて選ばれた手法のようである。賛否はあると思うが、大きな問題提起にはなっていよう。少なくとも私は、そう受け止めた。

 

ずっと観てきた「次世代映画ショーケース」だが、今日観た2本で終了となった。なんとも寂しい限りだ。シネ・ヌーヴォ、元町映画館、出町座の共同企画による本特集は、実にスリリングで興味深い内容だった。さまざまな困難はあると思うが、来年もぜひ実施してほしい。