ケセラセラ通信日記 -4ページ目

元町映画館で小田監督とトーク

昨夜の元町映画館での小田香監督との対談は、なんとか無事に終わりました。お客様はチョー少なめでしたが、皆さん午後10時過ぎまで席を立たずにお付き合いくださり、ありがたかったです。
『鉱 ARAGANE』の背景、作品の評価について、タル・ベーラについて、映画の内容について、『メキシコリサーチ映像』について、小田香監督についてなど、話したいこと(ほぼ小田監督への質問)を事前に用意しておいたので、約1時間の対談時間が足りないぐらいでした。私が喋りすぎたかもしれません。
面白かったのは、「各方面から絶賛されている『鉱』ですが、中には批判的な意見もありましたか?」という質問に、「うるさい! というのがありました」(それを体感させる映画なのに)、「対象(労働者)に対する視線が冷たい、と言われ、これは傷つきました」(この映画から、労働者へのリスペクトを感じ取れないとは、どういう神経か!)というお答えでした。
また、次は何を撮ろうということは考えずに(撮りたいものを自由に撮れる環境でもない)、撮れたものを編集し、また撮ってきては編集する、という繰り返しで出来た作品だ、というお話も興味深く伺いました。
まだ32歳の小田監督ですが、撮影対象に対しても、私からのくだらぬ質問に対しても、どこまでも誠実に向き合おうとする姿勢に感動を覚えました。

 

今夜は、小田監督と写真家の三浦博之さんとの対談があります。19時10分には元町映画館へ駆けつけましょう。

元町映画館で小田香監督とトーク直前

ようやく、今夜のトーク(神戸の元町映画館で、19時50分から小田香監督の『鉱 ARAGANE』〔2015年、68分〕と短編『メキシコリサーチ映像』〔2018年、12分〕の上映後、小田監督と対談)の準備が整ってきた。さて、本番はどうなりますことやら。

 

元町映画館では、明日以降も29日まで、連日19時10分から『鉱 ARAGANE』と短編が日替わりで上映され、毎日通えば、小田作品はほぼ網羅できることになる。
トークもあります。
明日24日(日)は、『鉱 ARAGANE』と『風の教会』(2018年、12分)上映後、小田監督×三浦博之さん(写真家)。
27日(水)は、『鉱 ARAGANE』と『TUNE』(2018年、5分)+『シネ・ヌーヴォ20thプロジェクト』(2017年、18分)上映後、小田監督×山﨑紀子さん(シネ・ヌーヴォ支配人)
どちらも面白そう。どうぞ、お楽しみに。

「大阪アジアン映画祭」10日目(最終日)

やっと、大阪アジアン映画祭(OAFF)の10日目、最終日にまでこぎつけた。
この日(3月17日)は、ずっとABCホール。10時半からの『浜辺のゲーム』では、同作品2回目のQ&A司会を担当。登壇ゲストは、監督・脚本の夏都愛未(なつと あいみ)さん、唯(ゆい)役でプロデューサーの福島珠理さん、桃子役の大塚菜々穂(ななほ)さん、バンドメンバー・エリ役の永純怜(ながすみ れい)さん、韓国人留学生ミンジュン役のク・ヒョンミンさんの5人。
前回と同じ質問を繰り返すのはつまらないので、夏都監督のフランス映画好きと、章タイトルになっているフランス映画の題名は私からご紹介した。
登壇ゲストが5人にもなると、司会者は満遍なく発言機会をつくることに腐心する。まず、一言ずつご挨拶をいただき、さらに私からひとつふたつ質問をする。各ゲストのご協力もあり、まあうまくいったと思うが、話を深掘りはできず、段取りっぽくなってしまったことは否めない。
客席からの質問で、夏都監督がホン・サンス好きでもあることが明らかになった。最後まで姿を現さない「美和子」が、この映画のキーパーソンであることも。いつも思うことだが、OAFFのお客様はレベルが高い。それだけに、司会も気を抜けないのだが。
ともあれ、この回で私のQ&A司会は終了! なんとか無事に終わり、ホッとした。あとは映画を観るだけだ。

 

12時50からは『群山:鵞鳥を咏う』(監督:チャン・リュル)。タイトルの読み方がどこにも載っていないが、「グンサン:がちょうをうたう」だろうか。群山は、韓国の港町。
前半と後半で時制が逆になっているのが面白い。詩を書く青年ユンヨン(パク・ヘイル)と、彼の先輩の元妻ソンヒョン(ムン・ソリ)との微妙な関係が見どころか。私には、旅に出る前(つまり後半)のソンヒョンが魅力的に映った。中国・延辺朝鮮族自治州生まれ、というチャン・リュル監督のアイデンティティ探し、という側面もある作品のようだ。

 

15時半からは『なまず』(監督:イ・オクソプ)。病院内での性行為がレントゲン写真に撮られてしまう。さて、写っているふたりは誰なのか? 疑われる若い看護師(イ・ジュヨン)が、普通で可愛く、どこか冷めているのがいい。この映画にも、ムン・ソリが副院長役で出演していた。お話・映像・音楽も斬新で、こういうことをやってみたかったんだろうなあ、と思った。

 

18時半からは、ついに授賞式とクロージング作品『パパとムスメの7日間』(監督:落合賢)の上映。
受賞結果はOAFFの公式ホームページに載っているが、そちらに飛ぶのもご面倒だろうから、以下にもご紹介しておく。
グランプリ(最優秀作品賞)=『なまず』(監督:イ・オクソプ)
来るべき才能賞=バイ・シュエ(『過ぎた春』監督)
スペシャル・メンション=ハン・ガラム(『アワ・ボディ』監督)&『ブルブルは歌える』(監督:リマ・ダス)
ABCテレビ賞=『アルナとその好物』(監督:エドウィン)
薬師真珠賞=ニルミニ・シゲラ(『アサンディミッタ』主演女優)
JAPAN CUTS Award=『JKエレジー』(監督:松上元太)
JAPAN CUTS Award スペシャル・メンション=『WHOLE』(監督:川添ビイラル)
芳泉短編賞=『じゃあまたね』(監督:ポーリー・ホアン)
芳泉短編賞 スペシャル・メンション=『2923』(監督:サニー・ユイ)
観客賞=『みじめな人』(監督:オリヴァー・チャン)

 

珍しいことに、私は受賞作のすべてを観たことになる(『WHOLE』は途中でちょっと眠ってしまったけど)。例年、何本かは見逃して、悔しい思いをするのだが。
今年はスペシャル・メンションの数が多いような気がする。それだけ作品の質が高く、甲乙つけがたかった、ということだろう。私ならこっちを選ぶがなあ、という部分もあるが、総じて妥当な受賞結果だと思う。ただひとつ「えっ?」と感じたのは、グランプリの『なまず』だった。前述したように、いろいろと新しいことをやりたかったんだろうなあと思うし、そのチャレンジ精神は買うが、作品の総合的評価としては断トツではなかったからだ。というわけで、「グランプリ」と「来るべき才能賞」を入れ替えたほうが良かったのでは、というのが私の率直な感想である。

 

『パパとムスメの7日間』は、クロージングにふさわしい作品だった。娘を演じたケイティ・グエンの愛らしさ。父と娘の人格が入れ替わるという設定はおなじみのものだが、その見せ方(映像)、話の運び(演出)が見事で、落合賢監督の手堅い映画づくりが功を奏している気がした。

 

すべてのプログラム終了後、ABCホール北側のPINEBROOKLYN(パインブルックリン)で開かれていた関係者打ち上げ(?)にちょこっと顔を出してから帰宅。皆さん、お疲れさまでした!

お知らせ

急なお知らせで恐縮ですが、明日23日(土)、神戸の元町映画館で、19時50分から小田香監督のドキュメンタリー作品『鉱 ARAGANE』(2015年/68分)と『メキシコリサーチ映像』(2018年/12分)が上映され、上映後に小田監督と私が、お客様の前で1時間ほどトークいたします。トークの内容がどうなるか分かりませんし、自信もありませんが、『鉱 ARAGANE』は超オススメのドキュメンタリーです。未見の方、お時間のあります方は是非!

「大阪アジアン映画祭」9日目

朝、11時10分前に、いつもの喫茶店へ(モーニングサービスは11時までなので)。しかしシャッターが下りていて、臨時休業の張り紙もない。「あれっ、日曜でもないのに。ママさん、風邪でもひいたかな」と思う。じゃあもう一軒のほうへと、急ぎ足で向かう。この店も、モーニングサービスは11時まで。2分前に到着したが、ここも閉まっている。ようやく、今日(21日)は祝日なのか、と気づく。どうも、まだ日常生活に戻れていないようだ。

 

さて、大阪アジアン映画祭の9日目(3月16日)だが、前にも書いたように、この日は午後からシネ・ヌーヴォでアミール・ナデリ監督の舞台挨拶があり、OAFFの映画は『G殺』(監督:リー・チョクバン)しか観られなかった。タイトルは「ジーさつ」と読む。
アパートの6階G室に住む男、Gカップ、ゲイ(Gay)、拳銃(Gun)、胃がん(Gastric cancer)などなど、Gにまつわる人物たちが入り乱れ、首を切断された女の謎解きが展開するが、どうにもこじつけっぽく、私は乗れなかった。
ただ、この映画は、現在の香港に漂う閉塞感や不安感を象徴しているともいわれ、「そうなのか」と思った。

「大阪アジアン映画祭」8日目

3月15日(金)。この日はQ&Aの司会はなく、気が楽だった。10時20分から上映の映画を観るべく、通い慣れたシネ・リーブル梅田へ。受付で手続きをしようとしたら「この映画はここじゃなくて、ABCホールですね」と言われ、青くなった。すでに、上映の20分前だ。あわてて飛び出し、タクシーを拾おうとするが、なかなか来ない。福島方面へ速足で歩きつつ、ようやく信号待ちをしていたタクシーをつかまえた。

 

ABCホール到着は、上映の5分前。しかし、ここで観た『過ぎた春』(監督:バイ・シュエ)が素晴らしかった! 中国の深圳(しんせん)から香港の高校へ、国境を越えて通う16歳の少女・ペイペイが主人公。親友のジョー(同級生の少女)と北海道旅行をするのが夢で、せっせと小遣いをためている。お金が欲しいペイペイは、船上パーティで知り合った青年ハオから、iPhone の密輸団を紹介され、その仕事に手を染める。躍動する少女の身体(とにかく、よく走る)と、16歳の無鉄砲、そして挫折。映像・音楽も新鮮で、これが女性監督バイ・シュエの長編デビュー作だとは、驚き、拍手するしかない。

上映後のQ&Aでは一番に手をあげ、「エグゼクティブ・プロデューサーに田壮壮(ティエン・チュアンチュアン)の名があるが、本作にはどのようなかかわりを?」と質問した。なんと、バイ監督は田壮壮の教え子なのだという。氏の指導のもと、リサーチと脚本には10年をかけたそうだ。娯楽性・芸術性・社会性が見事に一体化した傑作だと思う。

 

13時20分からは、同じABCホールで『アワ・ボディ』(監督:ハン・ガラム)を観た。現在公開中の『金子文子と朴烈(パクヨル)』で金子文子を演じているチェ・ヒソが主演。31歳の女性チャヨンは、公務員試験を受けようとしているが、これまでに何度も受験に失敗しているようで、勉強にも身が入らない様子だ。受験の直前、ついに「もう受けない」と宣言し、期待していた母を落胆させる。受験を放棄したものの、何をするでもなく、無為な日々を送っていた。そんなある日、自分と同世代の女性ランナー・ヒョンジュと出会う。チャヨンは一瞬にしてヒョンジュに惹かれ、自分もジョギングを始めるようになる。ヒョンジュを演じているアン・ジヘが、本当に颯爽としている。チャヨンはヒョンジュに導かれるようにして、少しずつ走れるようになり、精神的にも回復していく。それは、彼女が自分の人生を見直し、自立していく過程でもあった。

観ながら、ああ何か運動をしなければ、と思い、中年になってからマラソンを始めた女性・Eさんのことを思い出していた。

以下、ネタバレになるが、ヒョンジュが自死(?)してしまうのが残念であり、理解できなかった(その理由が、明確には描かれていないので)。

 

16時からも、同じABCホールで『ブルブルは歌える』(監督:リマ・ダス)。ブルブルは15歳の少女。インドの田園地帯で暮らしている。親友の少女ボニー、ちょっと女の子っぽい男の子シュムと、いつも一緒。ボニーには付き合っている同級生がいて、ブルブルにも詩で愛を告白してきた同級生がいる。しかしシュムは、同級生からはいじめられ、周りの大人からもからかわれている。でも、3人の友情は変わらない。

ある日、シュムを見張りに立て、ブルブルとボニーは互いのボーイフレンドとデートしていた。デートといっても、深い草むらに座り、楽しくおしゃべりしていただけだ。そこに他村(?)の男たちが通りかかり、シュムは怖くなって逃げ、彼・彼女たちは、男たちから「こんなとこで何してんだ!」とののしられ、なんと打擲(ちょうちゃく)されてしまう。噂は広がり、学校は退学に。

今どき、こんなことが本当にあるのか、と驚く。友情は壊れ、ブルブルも村に居場所がない感じになる。さて、彼・彼女らの再生はどうなるのか……。

古い因習に支配されている村は、しかしどこまでも美しく、雨や森や水田も人に優しい。それはまるで、自然が愚かな人間を見守り、抱きしめているかのようだ。

 

19時からは、中之島の大阪市中央公会堂で開かれた「ウエルカム・パーティ」に参加。昔からパーティというものが苦手で、人が話しているところに割って入れない。壁の花(枯れ木か)になってしまう。しかし今回は、Q&Aの司会をたくさんしたおかげで、知り合いも出来、会場で困ることはなかった。

二次会もあったらしいが、翌日も朝が早いので、21時過ぎには帰宅。

「大阪アジアン映画祭」7日目

「誰が興味あんねん!」は、お笑い芸人・ヤナギブソンのギャグだが、同様に思いつつ「大阪アジアン映画祭」の最後の数日について書いておきたい。

 

6日目までは書いたので、3月14日の7日目から。
シネ・リーブル梅田4で12時から『浜辺のゲーム』を観たあと、Q&Aの司会を担当。ゲストは、監督・脚本の夏都愛未(なつと あいみ)さん、さやか役の堀春菜さん、唯(ゆい)役でプロデューサーの福島珠理さん、桃子役の大塚菜々穂(ななほ)さんの4人。
『浜辺のゲーム』というタイトルから、『ゲームの規則』や『海辺のポーリーヌ』を連想したが? という質問には「フランス映画が大好きなんです」(夏都監督)とのお答え。
さもありなん。章タイトルになっているフランス語も、すべてフランス映画の題名なのだ。以下のように、それをご披露した。
Week end『ウイークエンド』ジャン=リュック・ゴダール
La règle du jeu『ゲームの規則』ジャン・ルノワール
Vivre sa vie『男と女のいる舗道』ジャン=リュック・ゴダール
La femme douce『やさしい女』ロベール・ブレッソン
Drôre de drame『おかしなドラマ』マルセル・カルネ
La poison 『毒薬/我慢ならない女』サッシャ・ギトリ 
Les biches『女鹿(めじか)』クロード・シャブロル
L'amour en fuite『逃げ去る恋』フランソワ・トリュフォー
A nos amour 『愛の記念に』モーリス・ピアラ
La drôlesse『あばずれ女』ジャック・ドワイヨン
La ronde『輪舞』マックス・オフュルス
La fin du monde『世界の終り』アベル・ガンス
同リストは、いちおう監督にも確認してもらったが、間違いがあればお教えください。
Q&A司会をなんとか無事に終え、ホッとして食事をしていたら、次に観る予定だった『桃源』(監督:ルー・ユーライ)の上映開始時間を間違えていたことに気づく。14時からを、午後4時からと思い込んでいたのだ。映画祭も半ばを過ぎ、いささか注意力が低下してきているようだ。
仕方がないので、空いた時間を次のQ&A司会の準備に充てる。

 

18時5分から、シネ・リーブル梅田4で『ビリーとエマ』(監督:サマンサ・リー)を観る。フィリピンのカトリック系女子校での、同級生同士の恋愛を爽やかに描いている。イサベル(愛称ビリー)を演じたザール・ドナトは、演技経験なしとのこと。それが信じられないぐらい、同性愛者の孤立感・疎外感を全身で表現していた。登壇したサマンサ・リー監督のカッコいいこと! 長身痩躯に革ジャンがバッチリ決まっていた。

 

21時10分からシネ・リーブル梅田3で『いつか、どこかで』を観たあと、Q&Aの司会。ゲストは、リム・カーワイ監督と主演のアデラ・ソーさん。映画の舞台は、バルカン半島のクロアチア、セルビア、モンテネグロ。私たちにはなじみの薄い国々なので、スタッフに頼んで地図を用意してもらい、お客様に説明した。思いつきは良かったが、地図が小さすぎて客席からはよく見えなかったようで、「スライドにして映してくれよ」との声もあったとか。今後の反省点といたします。
リム監督は例によってよく喋り、アデラさんの映画の中とは違う明るく活発な面も見ていただけたので、司会としてはまあまあの出来か。

『500年の航海』とギックリ腰

17日(日)に「第14回 大阪アジアン映画祭」が終わった。

 

翌18日(月)は、朝6時半に起床し、シネ・ヌーヴォでの勤めを終え、キドラット・タヒミックの最新作『500年の航海』を観た。
1989年の第1回 山形国際ドキュメンタリー映画祭で知り合った彼も、もう76歳になる。いつも闊達で飄々としている。映画フィルムのことを「スパゲッティ」などと言って、おどけていた。
『500年の航海』には、そのころの彼と近年の彼が出てくる。なにしろ、35年も撮りためたフィルムを編集したのだから。マゼランの世界一周は眉唾だ! という設定のもと、自分がマゼランの奴隷・エンリケを演じている。演じているといっても、これは劇映画ではなく、極めてドキュメンタリーに近い。
マゼランの航海を軸にして、彼の思いはフィリピンの歴史や自分の家族にまで及ぶ。なんとも自由で、肩の力が抜けている。今や「フィリピン・インディペンデント映画のゴッドファーザー」などと呼ばれているらしいが、おそらくご本人は「そんなことはどうでもいい」と思っているだろう。キドラットの思考は、いつも超越しているのだ。

 

今日(19日)は、朝に軽いギックリ腰をやらかしてしまい、何もする気がせず、終日 YouTube を観て過ごした。「腰痛になるのは精神的な要素が大きい」と言っていた友人がいるが、それが当たっている気分だ。
大阪アジアン映画祭の最後の数日について書かなければ、と思っていたが、また明日。

『山〈モンテ〉』舞台挨拶

この数日、時間的にまったく余裕がなく、記事を更新できなかったが、遅ればせながら徐々に追いかけていきたい。

 

まずは今日(16日)のことから。
福島のABCホールでOAFFコンペティション作品『G殺』(監督:リー・チョクバン)を観てからシネ・ヌーヴォへ。
今日が『山〈モンテ〉』(2016年)のシネ・ヌーヴォでの上映初日で、アミール・ナデリ監督が来館され、その舞台挨拶の司会を私が担当することになったからだ。
ナデリ監督は「東京フィルメックス」の常連で、私は同映画祭で『ハーモニカ』(1974年)、『CUT』(2011年)、『マジック・ランタン』(2018年)を観ている。
『山〈モンテ〉』は、シンプルな構成の中に、人間が生きることの本質を問うているような、見応えのある作品だ。映像も、どの画面を切り取っても、まるでドラクロワの絵画のように重厚で陰影に富む。
「ヨブ記」のヨブのような、シジフォスの神話のような、主人公の苦難の日々の最後(映画のラスト)がどうなるのか、私には予想がつかなかったが、「分かってたよ」と言う人もいて、是非ご自分の眼で確かめてほしい。

 

舞台挨拶およびQ&Aは、ナデリ監督がよく喋ってくださったので、司会はなくてもいいぐらいだった。それでも、20分弱の間に、客席からの質問を4つほど受けられたので、まあ良しとしよう。

「大阪アジアン映画祭」6日目

13日(水)。7時起床(睡眠6時間)、午後1時前までQ&A司会の準備。シネ・リーブル梅田へ移動して、『アサンディミッタ』(監督:アソカ・ハンダガマ)を観る。最後まで緊張感が途切れないのが凄い、と思った。いくつか疑問が残ったが、映画祭実行委員長・上倉庸敬(かみくら つねゆき)先生司会のQ&Aタイムで、それは解消した。やはり、Q&Aがあるのは良いことだ。

 

午後4時から『いつか、どこかで』(監督:リム・カーワイ)を観る。明日の上映時には、私がQ&A司会なので、その下調べも兼ねての観賞。バルカン半島の苛酷な歴史や厚い文化、人々の悲しみなどが、美しい街並み、雄大な自然の中に淡々と描かれる。それはまるで枯淡の味わい、悟りの境地のようだ。

上映後のQ&Aは、宇田川幸洋さんの司会。ゲストはリム監督と主演のアデラ・ソーさん。アデラさんは、映画の中のアデラとは雰囲気が違い、溌剌とした現代女性だった。驚いたのは、低予算の中でこれだけクオリティの高い作品が出来たことだった。女優さんも、ほぼ現地調達とのこと。

宇田川さんの人徳ゆえか、ゲストのおふたりが生き生きと自由に発言しているのが印象的だった。

 

午後6時20分からは、矢崎仁司(ひとし)監督が24歳の時に撮った『風たちの午後 デジタルリマスター版』。女性が女性に対して抱く、一方的な恋愛感情。しかしそれは、一途で哀しく、痛々しいほどだ。当時、16ミリフィルムで撮られた街の風景、風物、女性たちの髪型や服装など、そのすべてが懐かしい。

上映後のQ&Aは私が担当。ゲストは大御所の矢崎監督なので、超緊張。しかしご本人は、写真でよく見るサングラスをかけた怖いイメージとは異なり、いたって優しいおじさんだった。客席からの質問も2つほど出て、まあ及第点か。

 

明日はQ&A司会が2本もある。今夜は何時間眠れるのだろう。