『金子文子と朴烈(パクヨル)』をめぐって | ケセラセラ通信日記

『金子文子と朴烈(パクヨル)』をめぐって

森ノ宮で、映画パブリシスト・岸野令子さんが主催する「シネマトーク」に参加。今日のお題は『金子文子と朴烈(パクヨル)』(監督:イ・ジュンイク)で、参加条件は同作をすでに観ていること。
私は昨年、大阪アジアン映画祭のオープニングで観たが(その時のタイトルは『朴烈[パクヨル] 植民地からのアナキスト』)、今日のためにシネマート心斎橋で5日(火)にもう一度観てきた。
まずは参加者10人が、自己紹介を兼ねて同作の感想を順に述べていく。「朴烈を演じたイ・ジェフンのファンなんです」と言う人もいれば、「カラッとした今風の映画、と感じた。金子文子を演じたチェ・ヒソが素晴らしかった」「金子文子と朴烈が、実際にどんな思想を持ち、どんな活動をしていたのかが分からない(描かれていない)。ちょっと戯画化しすぎでは、とも思った」「自分はサラッとした映画とは感じなかった」「映画を観て、このふたりについてもっと知りたくなり、いろんな本を読んでいるところ」「アジアン映画祭のオープニングでこれを上映して、本当に大丈夫なの?と思った」などなど、実に多彩な意見が出てきて、驚いた。
私は、「最初に観たときは、爽やかな青春映画、恋愛映画だと感じた。しかし2度目に観たときは、基本的な印象はそれほど変わらないものの、ふたりに公平な裁判を受けさせようと尽力した日本人がいたことや、けっこう過激な発言もきっちり拾ってあることに気づき、公正に描こうとしたんだなと思った」などと述べた。
興味深かったのは、本作がこれほど人気になっているのは、観た人が口コミで広げたり、「勝手連」的な動きをする人々がいるためで、その基底には、ヘイトな言動や風潮が蔓延している現状を打破したいと感じている人々が、静かなカウンター行動として映画館に足を運んでいる、そんなうねりがあるのではないか、という岸野さんの指摘だった。
とてもすべては書ききれないが、参加者全員が自由に遠慮なく発言している感じが非常に良く、また来たいなと思った。