「大阪アジアン映画祭」8日目 | ケセラセラ通信日記

「大阪アジアン映画祭」8日目

3月15日(金)。この日はQ&Aの司会はなく、気が楽だった。10時20分から上映の映画を観るべく、通い慣れたシネ・リーブル梅田へ。受付で手続きをしようとしたら「この映画はここじゃなくて、ABCホールですね」と言われ、青くなった。すでに、上映の20分前だ。あわてて飛び出し、タクシーを拾おうとするが、なかなか来ない。福島方面へ速足で歩きつつ、ようやく信号待ちをしていたタクシーをつかまえた。

 

ABCホール到着は、上映の5分前。しかし、ここで観た『過ぎた春』(監督:バイ・シュエ)が素晴らしかった! 中国の深圳(しんせん)から香港の高校へ、国境を越えて通う16歳の少女・ペイペイが主人公。親友のジョー(同級生の少女)と北海道旅行をするのが夢で、せっせと小遣いをためている。お金が欲しいペイペイは、船上パーティで知り合った青年ハオから、iPhone の密輸団を紹介され、その仕事に手を染める。躍動する少女の身体(とにかく、よく走る)と、16歳の無鉄砲、そして挫折。映像・音楽も新鮮で、これが女性監督バイ・シュエの長編デビュー作だとは、驚き、拍手するしかない。

上映後のQ&Aでは一番に手をあげ、「エグゼクティブ・プロデューサーに田壮壮(ティエン・チュアンチュアン)の名があるが、本作にはどのようなかかわりを?」と質問した。なんと、バイ監督は田壮壮の教え子なのだという。氏の指導のもと、リサーチと脚本には10年をかけたそうだ。娯楽性・芸術性・社会性が見事に一体化した傑作だと思う。

 

13時20分からは、同じABCホールで『アワ・ボディ』(監督:ハン・ガラム)を観た。現在公開中の『金子文子と朴烈(パクヨル)』で金子文子を演じているチェ・ヒソが主演。31歳の女性チャヨンは、公務員試験を受けようとしているが、これまでに何度も受験に失敗しているようで、勉強にも身が入らない様子だ。受験の直前、ついに「もう受けない」と宣言し、期待していた母を落胆させる。受験を放棄したものの、何をするでもなく、無為な日々を送っていた。そんなある日、自分と同世代の女性ランナー・ヒョンジュと出会う。チャヨンは一瞬にしてヒョンジュに惹かれ、自分もジョギングを始めるようになる。ヒョンジュを演じているアン・ジヘが、本当に颯爽としている。チャヨンはヒョンジュに導かれるようにして、少しずつ走れるようになり、精神的にも回復していく。それは、彼女が自分の人生を見直し、自立していく過程でもあった。

観ながら、ああ何か運動をしなければ、と思い、中年になってからマラソンを始めた女性・Eさんのことを思い出していた。

以下、ネタバレになるが、ヒョンジュが自死(?)してしまうのが残念であり、理解できなかった(その理由が、明確には描かれていないので)。

 

16時からも、同じABCホールで『ブルブルは歌える』(監督:リマ・ダス)。ブルブルは15歳の少女。インドの田園地帯で暮らしている。親友の少女ボニー、ちょっと女の子っぽい男の子シュムと、いつも一緒。ボニーには付き合っている同級生がいて、ブルブルにも詩で愛を告白してきた同級生がいる。しかしシュムは、同級生からはいじめられ、周りの大人からもからかわれている。でも、3人の友情は変わらない。

ある日、シュムを見張りに立て、ブルブルとボニーは互いのボーイフレンドとデートしていた。デートといっても、深い草むらに座り、楽しくおしゃべりしていただけだ。そこに他村(?)の男たちが通りかかり、シュムは怖くなって逃げ、彼・彼女たちは、男たちから「こんなとこで何してんだ!」とののしられ、なんと打擲(ちょうちゃく)されてしまう。噂は広がり、学校は退学に。

今どき、こんなことが本当にあるのか、と驚く。友情は壊れ、ブルブルも村に居場所がない感じになる。さて、彼・彼女らの再生はどうなるのか……。

古い因習に支配されている村は、しかしどこまでも美しく、雨や森や水田も人に優しい。それはまるで、自然が愚かな人間を見守り、抱きしめているかのようだ。

 

19時からは、中之島の大阪市中央公会堂で開かれた「ウエルカム・パーティ」に参加。昔からパーティというものが苦手で、人が話しているところに割って入れない。壁の花(枯れ木か)になってしまう。しかし今回は、Q&Aの司会をたくさんしたおかげで、知り合いも出来、会場で困ることはなかった。

二次会もあったらしいが、翌日も朝が早いので、21時過ぎには帰宅。