「大阪アジアン映画祭」10日目(最終日) | ケセラセラ通信日記

「大阪アジアン映画祭」10日目(最終日)

やっと、大阪アジアン映画祭(OAFF)の10日目、最終日にまでこぎつけた。
この日(3月17日)は、ずっとABCホール。10時半からの『浜辺のゲーム』では、同作品2回目のQ&A司会を担当。登壇ゲストは、監督・脚本の夏都愛未(なつと あいみ)さん、唯(ゆい)役でプロデューサーの福島珠理さん、桃子役の大塚菜々穂(ななほ)さん、バンドメンバー・エリ役の永純怜(ながすみ れい)さん、韓国人留学生ミンジュン役のク・ヒョンミンさんの5人。
前回と同じ質問を繰り返すのはつまらないので、夏都監督のフランス映画好きと、章タイトルになっているフランス映画の題名は私からご紹介した。
登壇ゲストが5人にもなると、司会者は満遍なく発言機会をつくることに腐心する。まず、一言ずつご挨拶をいただき、さらに私からひとつふたつ質問をする。各ゲストのご協力もあり、まあうまくいったと思うが、話を深掘りはできず、段取りっぽくなってしまったことは否めない。
客席からの質問で、夏都監督がホン・サンス好きでもあることが明らかになった。最後まで姿を現さない「美和子」が、この映画のキーパーソンであることも。いつも思うことだが、OAFFのお客様はレベルが高い。それだけに、司会も気を抜けないのだが。
ともあれ、この回で私のQ&A司会は終了! なんとか無事に終わり、ホッとした。あとは映画を観るだけだ。

 

12時50からは『群山:鵞鳥を咏う』(監督:チャン・リュル)。タイトルの読み方がどこにも載っていないが、「グンサン:がちょうをうたう」だろうか。群山は、韓国の港町。
前半と後半で時制が逆になっているのが面白い。詩を書く青年ユンヨン(パク・ヘイル)と、彼の先輩の元妻ソンヒョン(ムン・ソリ)との微妙な関係が見どころか。私には、旅に出る前(つまり後半)のソンヒョンが魅力的に映った。中国・延辺朝鮮族自治州生まれ、というチャン・リュル監督のアイデンティティ探し、という側面もある作品のようだ。

 

15時半からは『なまず』(監督:イ・オクソプ)。病院内での性行為がレントゲン写真に撮られてしまう。さて、写っているふたりは誰なのか? 疑われる若い看護師(イ・ジュヨン)が、普通で可愛く、どこか冷めているのがいい。この映画にも、ムン・ソリが副院長役で出演していた。お話・映像・音楽も斬新で、こういうことをやってみたかったんだろうなあ、と思った。

 

18時半からは、ついに授賞式とクロージング作品『パパとムスメの7日間』(監督:落合賢)の上映。
受賞結果はOAFFの公式ホームページに載っているが、そちらに飛ぶのもご面倒だろうから、以下にもご紹介しておく。
グランプリ(最優秀作品賞)=『なまず』(監督:イ・オクソプ)
来るべき才能賞=バイ・シュエ(『過ぎた春』監督)
スペシャル・メンション=ハン・ガラム(『アワ・ボディ』監督)&『ブルブルは歌える』(監督:リマ・ダス)
ABCテレビ賞=『アルナとその好物』(監督:エドウィン)
薬師真珠賞=ニルミニ・シゲラ(『アサンディミッタ』主演女優)
JAPAN CUTS Award=『JKエレジー』(監督:松上元太)
JAPAN CUTS Award スペシャル・メンション=『WHOLE』(監督:川添ビイラル)
芳泉短編賞=『じゃあまたね』(監督:ポーリー・ホアン)
芳泉短編賞 スペシャル・メンション=『2923』(監督:サニー・ユイ)
観客賞=『みじめな人』(監督:オリヴァー・チャン)

 

珍しいことに、私は受賞作のすべてを観たことになる(『WHOLE』は途中でちょっと眠ってしまったけど)。例年、何本かは見逃して、悔しい思いをするのだが。
今年はスペシャル・メンションの数が多いような気がする。それだけ作品の質が高く、甲乙つけがたかった、ということだろう。私ならこっちを選ぶがなあ、という部分もあるが、総じて妥当な受賞結果だと思う。ただひとつ「えっ?」と感じたのは、グランプリの『なまず』だった。前述したように、いろいろと新しいことをやりたかったんだろうなあと思うし、そのチャレンジ精神は買うが、作品の総合的評価としては断トツではなかったからだ。というわけで、「グランプリ」と「来るべき才能賞」を入れ替えたほうが良かったのでは、というのが私の率直な感想である。

 

『パパとムスメの7日間』は、クロージングにふさわしい作品だった。娘を演じたケイティ・グエンの愛らしさ。父と娘の人格が入れ替わるという設定はおなじみのものだが、その見せ方(映像)、話の運び(演出)が見事で、落合賢監督の手堅い映画づくりが功を奏している気がした。

 

すべてのプログラム終了後、ABCホール北側のPINEBROOKLYN(パインブルックリン)で開かれていた関係者打ち上げ(?)にちょこっと顔を出してから帰宅。皆さん、お疲れさまでした!