「大阪アジアン映画祭」終わる | ケセラセラ通信日記

「大阪アジアン映画祭」終わる

この15日で、第15回 大阪アジアン映画祭(OAFF)が終わった。新型コロナウイルスへの対処として、ほぼすべてのセレモニー・舞台挨拶・Q&Aが中止となったが、映画は予定どおり上映された。

期間中、私は短編を含め37本、Q&Aの司会を担当するため事前にスクリーナーやDVDで観たものを含めると計43本を観たことになる。

以下、簡単にその感想を記しておきたい。1〜3日目はすでに書いた。4日目は休んだので、5日目の3月10日(火)に観た3本から。

 

フィリピン映画『LSS:ラスト・ソング・シンドローム』(LSS:Last Song Syndrome/ジェイド・カストロ監督)。同じ歌を愛する若い男女が、偶然バスで隣同士になり、意気投合。バスに乗っている短い時間の中で、別れがたく思うほど互いに惹かれ合う。その後、ふたりは別々の日常を過ごすが、ともに深い失意に沈む経験をする。そんな中、またしても偶然に再会し恋人同士になるというハッピーエンド。愛を語るのに歌詞を引用するあたりが目新しい。その歌の数々は、私がまったく知らないものだったが。ヒロインを演じたガビ・ガルーシアの、のびのびと育ったような健康的肢体がまぶしい。

 

フランス・バングラデシュ・デンマーク・ポルトガル映画『メイド・イン・バングラデシュ』(Made in Bangladesh/ルバイヤット・ホセイン監督)。バングラデシュの首都ダッカ。大手アパレルブランドの下請け製縫工場が密集している。主人公シムは、そんな工場のひとつで働く23歳の既婚女性。労働環境は劣悪で、夫は失業中。労働者を支援するNPOの女性メンバーと知り合ったことをきっかけに、シムは労働組合の立ち上げに奮闘する。だが、夫の協力は得られず、会社からは陰に陽にの妨害に遭う。さらに、労働省(?)の役人も会社側に付いて申請書類を棚上げにする。このままでは仲間を裏切る結果になると思い詰めたシムは、一発逆転の行動に出て労働組合設立を成し遂げる。映画はここで終わっているのだが、労働組合が出来ても、前途は多難だろうなと思わせられた。公式カタログには《実在する女性の経験をもとに》とある。

 

フィリピン映画『メタモルフォシス』(Metamorphosis/ホセ・エンリーケ・ティグラオ監督)。LGBTを扱った映画は珍しくなくなったが、本作はインターセックス(性分化疾患)を描くことに挑戦している。「性分化疾患」という言葉も分かりにくいが、平たく言えば両性具有、半陰陽ということになるのだろうか。ただ、この問題は難しくて、インターセックスの範疇には、両性の生殖器、生殖腺、染色体、ホルモンの分泌状態などの組み合わせによって30〜60以上ともいわれるパターンがある、とのこと。映画の主人公アダムは15歳。男の子として育てられ、本人もそのことを微塵も疑っていないが、ある日、突然に初潮を迎える。混乱する本人。同級生からのいじめに遭い、強権的な父親は「すぐに手術して女になれ」と迫る。年上の転校生エンジェルだけが、アダムを差別しない。当事者に寄り添うこと、理解しようと努めることの大事さを痛感させられた。